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3,643人の声から解明。行政と医療制度に取り残された劣悪な環境下にある家族の実態を可視化した【入院中の子どもに付き添う家族の生活実態調査】発表。~「労力提供型」の付き添いであることが明らかに~

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近藤 厚史(上級睡眠健康指導士・第638号、寝具ソムリエ)

上級睡眠健康指導士として、睡眠に悩みを抱える方たちへ睡眠改善のアドバイスや、最適なマットレスや枕などの選定アドバイスをおこなう。より多くの人に睡眠改善のきっかけやヒントを届けるため、「Sleepee」に記事監修として携わっている。

キープ・ママ・スマイリング

“異次元の少子化対策”を掲げる政府のもと「こども家庭庁」が今年4月に発足し、子どもを取り巻くさまざまな課題への対策のほか、各省庁への勧告権を持つなど縦割り行政の改善が期待されています。‟こどもまんなか社会”の実現のために新しい仕組みが始まる中、依然として取り残され、必要な支援や対策がなされていないのが、入院している子どもとその家族です。
NPO法人キープ・ママ・スマイリング(東京都中央区、理事長:光原ゆき)は、「入院中の子どもに付き添う家族の生活実態調査2022」の調査概要を6月1日(木)に公表しました。

  • 「小児の付き添いの問題」と調査の実施背景

病気の子どもにとって親に付き添ってもらうことは早い回復、成長・発達の過程においても必要なことです。一方で、付き添う親は病人ではないため、食事は提供されず、子どもの小さなベッドで添い寝するか、寝返りも打てない狭くて硬い簡易ベッドで寝るなど、劣悪な環境で生活しています。その結果、精神的ストレスを抱え、体調を崩す親も多く、さらに付き添いで長期間拘束されることで休職や離職にもつながるなど、身体的にも経済的にも深刻な状態に置かれています。

全国に当事者・経験者が大勢いながら、付き添いの実態を示す大規模調査が、国・小児医療研究機関を含め、これまでなされていない状況でした。そのため、長い間、この問題は社会的課題として認識されてきませんでした。本調査は、子どもの付き添い経験がある家族を対象に小児医療現場で起きている実態を解明するために実施されたものです。この度、3,000人以上の有効回答を得た調査データの集計及び分析が完了、その結果を発表いたします。

  • 【調査結果サマリー】~データから推測されたこと~
◆ 本来は禁止されている「労力提供型」の付き添いに。医療的ケアを担う人も。
◆ 長時間・夜間に及ぶケアで、親の食事・睡眠・体調への悪影響も。
◆ 看護師不足から親に付き添ってもらわなければならない現状が。
◆ 「労力提供型」付き添いが常態化することで入院児の安全・安心が脅かされることが懸念
◆ 親に選択権がなく、希望していないのに、親の希望で付き添っていることに。
◆ 院内のコンビニ・売店の食事が6割強。食べる時間すらない家族も多数。
◆ 2人に1人が子どもと同じベッドに就寝。8割強は熟睡できず。
◆ 半数以上が体調不良になる中、病院からのサポートを受けられたのは2割。
◆ 経済的な不安を全体の7割が感じ、 年単位の付き添いでは退職に追い込まれる人も。

●調査報告の詳細:https://momsmile.jp/

  • 本来は禁止されている「労力提供型」の付き添いに。医療的ケアを担う人も。
■参考 看護補助者の仕事・療養上の世話(食事、清潔、排泄、入浴、移動等)・病室内の環境整備、ベッドメーキング・看護用品及び消耗品の整理整頓・看護職員が行う書類・伝票の整理および作成の代行・診療録の準備等(入院基本料等の施設基準等で規定) 

●「付き添い中に行った世話やケアの内容」について調査したところ、食事介助・排泄ケアは9割、入浴介助・服薬は8割の人が従事経験があると回答しました。厚生労働省のルールで本来禁止されている看護師の肩代わりとなるような「労力提供型の付き添い」の実態が明らかになりました。

●その他に記入されたケア内容を精査すると「気管切開ケア、人工呼吸器の管理、排痰ケア、口腔ケア、インスリン注射、腹膜透析、尿量の測定、脳波検査の発作マーキング、補助人工心臓装着に伴う消毒作業の補助」など、医療的ケアを担っている人が少なくないこともわかりました。

  • 長時間・夜間に及ぶケアで、親の食事・睡眠・体調への悪影響も。

●「付き添い中に行っていた世話やケアに、1日あたりどのくらいの時間を費やしましたか。」という質問では、「21~24時間」が25.5%と最も多く、全体の4分の1を占めました。また1日6時間以上を費やした割合は全体の80.9%に上りました。

●泊まり込んで付き添っている人のうち、夜間に子どもの世話や看護をすることがあった人は94.5%を占めました。また、子どもと一緒に入浴して世話することがあった人も3割いることが判明しました。

●「付き添い中に体調を崩したことがありますか」という質問には、約半数(51.3%)の人が体調を崩したことがあると回答。就寝中の熟睡感がなかった人の割合が8割を超えていることなどからも、長時間・長期間に及ぶ付き添い生活により親が健康を損なっていることが推測されました。

  • 看護師不足から親に付き添ってもらわなければならない現状が。

●「泊まり込んで付き添う理由を説明されましたか」という質問に「説明を受けていなかった」と回答したのが48.3%と、付き添い者の約半数は泊まり込んで付き添う理由について説明を受けていないことが判明しました。

●また、付き添いの理由について説明を受けた人(1,694人)に5つの選択肢(複数回答)を示したところ、「子どもが自分で身の回りのことができないから」60.3%、「親が一緒にいたほうが子どもが安心するから」59.9%が共に多い回答となりました。「マンパワー不足で看護師がすべての世話をできないから」という説明を受けた人も1割強いることが判明しました。

●付き添い中に看護師に子どものケアをまかせられない(親が付き添わないと安心できない)と思った経験が「ある」と答えたのは61.0%(n=2,221/3,643)でした。

●「ある」と回答した人に、看護師にまかせられない理由を4つの選択肢(複数回答)で示したところ「看護師が忙しくて十分に面倒を見てもらえないと感じたから」が83.8%、次に「親がそばにいないと、子どもが精神的に不安定になったから」55.6%が続きました。

●「その他」18.8%(n=417/2,221)に記載された主な理由として、以下の回答がありました。

・ナースコールを押しても来ない。親がケアしたほうが早い(多数回答あり)・機器のアラームが鳴っていても見に来ないなど、危険を感じた(多数回答あり)・まかせるかどうかの選択肢はなく、親がやるのが当たり前の雰囲気で自分も疑問に思わずやるしか ないと思っていた(多数回答あり)・看護師が通常業務で忙しく、声をかけるのが申し訳なかったから(多数回答あり)

このような回答から看護師不足により親に付き添ってもらわなければならない現状も推測されました。

  • 「労力提供型」付き添いが常態化していることにより入院児の安全・安心が脅かされることが懸念

●看護師にまかせたいケアに関する質問では、看護師にまかせたいケアは、「清潔ケア(入浴介助、清拭、汚物や嘔吐物の処理など)」が41.3%と最も多く、次いで「見守り(診察・治療・検査等への同行を含む)」29.7%、「服薬」27.9%、「食事介助(授乳、ミルクの準備・哺乳、経管栄養の準備・注入を含む)」22.1%と続きました。

●一方で、「看護師にまかせたいことはない」と回答する人が31.3%に上り、子どもの世話やケアは親が行うことが当然だと受け止めている人、あるいは何でも行いたいという要望を持つ人が少なくないこともうかがえました。

●また、看護師にまかせたいケアの理由については、1,951件という多数の自由記述があり入院児および付き添い者の安全・安心が脅かされていることが懸念されるコメントが散見されました。

【服薬】・寝不足の状態や消灯後の暗い中で服薬をセットせねばならず、間違えて薬を飲ませてしまった。・薬の管理から服薬まで親が担い、看護師がチェックする。過去数回、薬の種類に漏れがあったが、責任の所在があいまいで、親が自責の念にかられた。・常に寝不足で、注意力散漫で薬の管理を間違えそうになった。・服薬時、私が寝ていても「薬の時間です」と起こされた。・服薬のたびに子どもが泣いたり吐いたりしてうまく飲ませられなかった。
【清潔ケア】・CV(中心静脈カテーテル)や点滴がある状態でのシャワーなどの介助はハードルが高い。・酸素も点滴も付いている中でのシャワーを浴びさせて自分のシャワーもする(しかも大体20分以内)のはすごく大変なので、お風呂だけは入れてほしい。・ドレーンやペースメーカーなどが付いた状態での入浴や清拭は、医療的な素人だと恐ろしかった。
【食事介助】・食事介助では誤嚥や窒息の危険もあるため、見守りをしてほしいと思った。・病院にいるのに経鼻経管栄養の対応を親がさせられる。もしミスが生じたら誰の責任になるのか。
【排泄ケア】・点滴やモニター、たくさんの管につながれていてオムツ交換が大変だった。・(排泄物に混じった)抗がん剤に曝露するおそれもあるため、看護師に行ってほしかった。・排泄物の色や性状、量はそのつどスタッフに報告しなければならず気が抜けなかった。治療に必要な情報なら直接スタッフがやってくれると助かる

「労力提供型」の付き添いが常態化することにより、治療効果が低下し子どもの安全・安心が脅かされることが懸念されました。親からも「医療的処置を施された中での世話やケアは、子どもの安全・安心を確保するうえでも専門家(看護要員)にまかせたい」という意見が多数を占めました。

  • 親に選択権がなく、希望していないのに、親の希望で付き添っていることに。

●付き添い入院の希望については、希望する・しない以前に「付き添いが必須だった」人が全体の7割を占めました。また、病院から付き添い入院の要請があったかどうかについて「要請された」のは全体の8割に及びました。さらに、付き添い入院する際に付き添い願い書に署名し提出したのは70.6%でした。つまり、親には付き添いに対する選択権が与えられず、希望していないにもかかわらず、体裁としては親の希望で付き添っていたことになります。親の同意なく、あるいはあったとしても長時間・長期間拘束することは親の人権を侵害していることに相当すると考えています。

  • 院内のコンビニ・売店の食事が6割。食べる時間すらない家族も多数。

●「食事を調達していた場所」については「主に院内コンビニや売店」が65.1%と最も多く、次いで「主に院外コンビニや売店、スーパー」8.5%、「主に差し入れ(お弁当)」7.9%が続くなど、病院の外に容易に出かけられない状況が推測できました。また、「主に病院から付き添い者に提供される食事」は無料・有料を合わせてもわずか5.6%でした。

●1日に1食または2食しか食べられなかった人に3食を食べなかった理由について尋ねると「食べる時間がなかった」が全体の6割を占め、食事の時間もままならないほどケアに追われている状況が推測されました。

  • 2人に1人が子どもと同じベッドに就寝。8割は熟睡できず。

●睡眠の状況について質問したところ、「子どもと同じベッドに寝ていた」のが51.8%と最も多く、次に「簡易ベッド(病院からレンタル)」が32.9%、「ソファー、椅子」が6.4となりました。

●夜間に子どもの世話や看護をすることがあった人が9割を超える中、約8割が熟睡できなかったことも判明。熟睡できなかった背景には、子どもの世話やケアだけでなく、劣悪な睡眠環境も影響していることが推測されます。

  • 半数以上が体調不良になる中、病院からサポートを受けられたのは2割。

このような状況下、半数以上の人が付き添い入院中に体調を崩した経験があり、体調が思わしくないのに付き添い入院や面会を続けていた人も同様に半数以上いることも判明しました。一方で、体調を崩した際、病院で何らかのケアやサポートを受けられたのは、わずか2割程度。さらに、サポートを受けた人のコメントから、これまで親が行っていた子どもの世話やケアを、一時的に看護師にまかせることができたという対応が大半で、それも短時間であることが目立ちました(以下、参照)。

・保育士に1時間くらい(子どもを)預かってもらい、横になれた(多数回答あり)。・看護師さんに頼んで一時的に帰宅させてもらった(多数回答あり)。・付き添いは必要と言われ、交代者がいなかったので、自分の治療のために他の病院を受診後、小児病棟に戻って付き添いを続けた。・「体調がよくなるまで付き添いをストップしてください」と看護師さんから気を遣ってもらえた。・市販薬の頭痛薬の殻を見た看護師さんから「何かあれば一時的にナースステーションで、お子さんを看ます」と言ってもらえて気が楽になった。
  • 経済的な不安を全体の7割が感じ、 年単位の入院では退職に追い込まれる人も。

子どもの入院に泊まり込んで付き添うことになると、その家庭は二重生活となり、生活費が嵩むことがわかっています。付き添い中の経済状況について質問しました。

● 経済的な不安については、「とても感じている」が31.0%と最も多く、「感じている」19.7%、「やや感じている」20.8%と合わせると、全体の71.5%を占めました。

●付き添い生活の中で節約していたこと(複数回答)を尋ねると、「飲食費を削る」が69.6%(n=1,813/2,605)と最も多い回答でした。「簡易ベッドを借りない」24.1%という人もおり、これらの節約は付き添い者の食事や睡眠の質を低下させることにもつながっています。また、わずかながら「車中泊をする」0.5%もいることがわかりました。

●「その他」には、主に以下のコメントがありました。

・洗濯はすべて手で洗う(複数回答あり)・病院の近くに引っ越した。・美容院に行かない、洋服を買わない。・保険料の支払いを止めた。・化粧品、生理用品、衛生用品などを低価格帯のものに替える。・きょうだい児の学費や習い事をセーブした(複数回答あり)。

●付き添い中の仕事の状況については、入院してから有給休暇、介護休暇、看護休暇の取得のほかに休職、転職、退職している人も一定数おり、付き添いによって仕事が続けられなくなっていることがわかりました。

●フリーコメントからは、仕事と付き添いを両立させるために親がさまざまな対応に迫られていることが読み取れました。年単位の長期入院になると育児休暇、介護休暇、看護休暇を使い果たして退職に追い込まれる人が目立ち、現状の就労支援制度では不十分であることも推測されました。

本調査結果により、付き添い入院の深刻な状況が定量・定性的に可視化されました。また、看護師不足を背景に厚生労働省のルール(入院中の看護に係る規定)では本来禁止されている看護師の肩代わりとなるような「労力提供型」の付き添いの実態が明るみになりました。この課題に対して、こども家庭庁と厚生労働省に緊密に連携・協力して取り組んでいただくために、本調査に基づいた要望書を提出いたしました。本調査の概要報告書、こども家庭庁・厚生労働省への要望書は下記よりご覧ください。https://momsmile.jp/

【調査概要】 

  • 調査時期:2022年11月25日(金)~12月16日(金)
  • 調査対象者:2018年1月~2022年12月までの期間中に、0~17歳の子どもの入院に付き添っていた人(病室の泊まり込みだけでなく、面会・通いによる付き添いも含む)
  • 調査方法:インターネット調査 
  • 団体概要

・団体名 : NPO法人キープ・ママ・スマイリング

・代表者 : 理事長 光原ゆき

・所在地 : 〒104-0061 東京都中央区銀座4-13-19 銀林ビル4階

・設立  : 2014年11月

・事業内容: 小児病棟に付き添い入院中の家族に対する食事、食品・物品等の提供を通じた支援事業、普及啓発活動

・URL : https://momsmile.jp

引用:PR TIMES

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