10月9日は“熟睡の日”「週に1回以上夢を見る人」が約4割意外と知らない「レム睡眠」の重要性を専門家が解説
一般社団法人ウェルネス総合研究所では、来たる10月9日の“熟睡の日”の前に、夢に関する実態調査を公開しました。今回の調査結果により、一定数の人が夢を見る機会があることが分かった一方で、記憶に残る夢を見る傾向があるレム睡眠については、あまり重要視されていないことがわかりました。この数年で「眠りのメカニズム」が解明されることによって、レム睡眠の重要性に注目が集まっています。そこで、レム睡眠を最前線で研究している、東京大学大学院理学系研究科教授の林悠先生にレム睡眠の存在意義を解説いただきました。
■夢を見る頻度は“週に1回以上”が全体の約4割以上に
「好きな人に会う」「なにかに追われる」など多種多様な夢を見ている
はじめに、どのくらいの頻度で夢を見るのか質問したところ、全体で4割以上の人が週に1回以上の夢を見ていることが判明しました。世代別に見てみても、全年代において、おおよそ週に1回以上夢を見ている人が約4割と一定数いるようです。次に最近見た夢の内容について聞いてみると、推しや憧れの人、なかなか会えない人に会える夢や、バンジージャンプなどを体験する夢、「留年」「化け物に追われた」など追い込まれる夢など、ユニークな回答が多く見られました。私たちは、レム睡眠とノンレム睡眠の両方で夢を見ますが、レム睡眠中に見た夢は鮮明で記憶に残りやすいと言われています。もしかするとレム睡眠時に見ている夢なのかもしれません。
【夢の内容】
・芸能人が出てきた
・亡くなった祖父が出てきたこと
・推しとキャッキャした。
・バンジージャンプにチャレンジする場面
・某有名クリニックのCMを作る夢
・なぜか百貨店でインコを飼う夢
・好きなタレントの夢
・息子の小学校の担任が家庭訪問に来て喧嘩をする
・大学で留年する夢
・妹が人魚にさらわれる
・好きなアイドルに会った
・地面が割れてマントルまで落ちていく
・化け物に追いかけられる夢
・大谷翔平選手と話す夢
■夢を見やすい「レム睡眠」の重要性はあまり理解されていない!?
質の高い睡眠には、レム睡眠も欠かせない
一方、同じ調査の中で、「睡眠の質を高めるためにはレム睡眠よりも深睡眠を多くとることが重要である」と64.7%と回答していることからも、半数以上の人が「レム睡眠よりも、深睡眠のほうが大事だと考えている」ということがわかりました。
実は“熟睡=質の高い睡眠”をとるためには深睡眠だけでなく、実は睡眠の後半に現れるレム睡眠の時間を確保することも重要とされています。脳のリフレッシュ効果など様々な研究が進むレム睡眠も十分に確保し、レム睡眠とノンレム睡眠を十分に確保することが、質の高い睡眠の条件です。こうしたことを理解することが、現代人の睡眠改善には重要かもしれません。
■レム睡眠研究者に聞く、謎多きレム睡眠の役割とは?
加齢によってレム睡眠とノンレム睡眠のバランスは変化する!
質の高い睡眠のためには、ノンレム睡眠だけでなく、レム睡眠の重要性にも目を向け、睡眠バランスの重要性に目を向けていくことも重要です。レム睡眠の重要性について、レム睡眠研究の第一人者で、東京大学大学院理学系研究科教授の林悠先生に解説いただきました。
レム睡眠は“脳のリフレッシュ効果が期待できる重要な睡眠”
睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠に区分されます。ノンレム睡眠はその深さでステージ分けをすることができます。レム睡眠は、その効果についての検証が難しく、謎が多い睡眠です。レム睡眠は記憶や感情の制御を担当しており、情報を統合したり、過去の経験とつなげたりするとともに、 “脳のリフレッシュ”をする働きをしているといわれています。最近の研究ではレム睡眠、ノンレム睡眠は相関関係にあることも推察されています。レム睡眠を意識することが“熟睡=睡眠の質向上”につながるかもしれません。
レム睡眠とノンレム睡眠のバランスは加齢によって変化する!
人のレム睡眠の割合は、新生児期に最も多く、幼少期に大幅に減少します。さらに、思春期以降も加齢とともに少しずつ減少します。認知症の有病率が年齢と共に上がっていくことを合わせて考えると、レム睡眠は認知症を考える上で、重要な役割を担っている可能性があると言えるでしょう。
注目されるレム睡眠と認知症リスクの相関性
もともと、ノンレム睡眠時にアミロイドβなどが老廃物として排出される可能性からノンレム睡眠と認知症リスクとの関連が注目されていました。ところが最近はレム睡眠の方に、記憶の定着に寄与しているというエビデンスが報告されるようになり、レム睡眠の少なさと認知症発症率に相関性も報告されるようになったのです。※1
レム睡眠時に脳の血流量が上昇することも判明、夢の仕組みは解明中。
また、レム睡眠中は、大脳皮質の毛細血管内の血流が大幅に上昇することも判明しました。脳の毛細血管の血流量が上昇することで、脳に必要な血液中の酸素や栄養を送り届け、不要となった二酸化炭素や老廃物が回収され、脳がリフレッシュされている可能性が示唆されました。※2
今回のテーマは「夢」でしたが、なぜ夢を見るのか、どういう仕組みなのかほとんどわかっていません。ただ、レム睡眠中の人を起こすと、およそ8割の人が「夢を見ていた」と話すことから、レム睡眠は夢を活発に見る睡眠だと言えます。またネガティブな内容が多いです。今回の調査でも何かに追われる夢を見られていましたが、もしかするとレム睡眠時での夢なのかもしれませんね。レム睡眠は記憶の定着に関係するといわれており、夢には記憶とリンクするストーリーが多々ありますが、記憶に関わる脳の海馬の機能との相関も明らかにされています。全体像の解明には至っていませんが、現代科学は着実に夢に向かって突き進んでいるようです。
林 悠 先生
東京大学 大学院理学系研究科生物科学専攻睡眠生理学研究室教授
筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構客員教授博士(理学)
東京大学卒業後、東京大学大学院理学系研究科修了。理化学研究所脳科学総合研究センター(現・脳神経科学研究センター)研究員、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構助教、准教授を経て、2020年4月より現職。筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構教授と兼務。動物の睡眠構築を操作できる独自の技術を活用し、睡眠の作用やメカニズムの解明、認知症や精神疾患などに対する新たな予防治療法の開発をめざす。2017年文部科学大臣表彰 若手科学者賞受賞。
※1 Pase et al., Sleep architecture and the risk of incident dementia in the community. Neurology 89(12):1244-1250 (2017)
※2 レム睡眠中におこる大脳毛細血管の血流の上昇と、A2a受容体の関与 2021年
Cerebral capillary blood flow upsurge during REM sleep is mediated by A2a receptors Cell Reports
■調査概要
・調査名 睡眠に関する意識と実態調査
・調査主体 一般社団法人ウェルネス総合研究所
・調査方法 インターネットによるアンケート調査
・調査期間 2023年8月4日(金)~6日(日)
・調査対象者 全国の10-60代男女1,200名 各年代男女 200名均等割り付け
※睡眠障害の恐れがある方、睡眠課題の治療のため病院やクリニックを受診している方を除く
※数値については、小数点第1位までの掲載としています。回答結果はパーセント表示を行っており、
小数点以下第2位を四捨五入して算出しているため、各回答の合計100%にならない場合があります。
■参考情報
睡眠の盲点!?睡眠にはぐっすり深く眠るレム睡眠だけじゃなく、レム睡眠との“睡眠バランス”が重要
睡眠は私たちの人生の3分の1を占めており、睡眠の質=健康の質といえるほど重要なものです。まだまだ解明が進んでいる途中ですが、「ノンレム睡眠の中でも深い睡眠である深睡眠」と「レム睡眠」2つの睡眠は、どちらも重要な役割を担っており、ぐっすりと深く眠るだけでは不十分です。「ノンレム睡眠の中でも深い睡眠である深睡眠」と「レム睡眠」のどちらもバランスよくとることが質の良い睡眠の条件ともいえます。
「睡眠バランス研究プロジェクト」では、皆さまの日中のパフォーマンスや健康の維持に役立てていただけるよう、2つの睡眠バランスの重要性を発信してまいります。
■ウェルネス総合研究所について
ウェルネス総研は、独自の視点で健康・ウェルネスに関する情報の調査・集積・発信を行なっている一般社団法人です。情報発信プラットフォーム型メディア「ウェルネス総研レポート online」の運営、白書の発刊をはじめとした専門性の高い情報発信のほか、人々の健康やQOL向上を助ける食品・医薬品・化粧品・運動などに関わる団体・企業に向けたコンサルティングも実施しており、人々の健康維持・改善を実現する、健康・ウェルネス産業の発展に寄与してまいります。
■睡眠バランス研究プロジェクトについて
毎日繰り返す睡眠は日中のパフォーマンス、さらには健康にまで深く影響を与えています。ウェルネス総合研究所では、「睡眠バランス」の重要性を発信していくことを目的に、最新研究などを紹介する「睡眠バランス研究プロジェクト」サイトを公開しています。
専門家にも参画いただき、睡眠バランスに関する研究結果や取り組みなどを紹介していく予定です。
【睡眠バランス研究プロジェクト】https://wellnesslab-report.jp/pj/sleep/
引用:PR TIMES